今年の8月、約20年ぶりに
銀座の歌舞伎座に歌舞伎を観に行きました。
そして、今月初旬にまた行く機会に恵まれ
観てきました!
看板に「歌舞伎座新開場十周年」とあるので
そうか、歌舞伎座が新しくなって10年も経つのだなあ、
その間1回も来たことがなかったのだなあ…としみじみ。
(8月に来た時は見逃していました)
今回観たのは、第一部 の
『旅噂岡崎猫』と
『今昔饗宴千本桜(はなくらべせんぼんざくら)』
8月に観た「新・水滸伝」は
ミュージカル的な要素もあり
演出家が現代劇の方なので
これはこれで面白いけれども、
今度は“ザ・歌舞伎”な
古典が観たいかな〜と思っていたらば
今回、行きがかり上
「初音ミクと歌舞伎のコラボ」
を観に行くことになった次第。
初音ミクかあ
「うーん、それはどうなんでしょう」と
一瞬引いてしまったけれど
これも何かの縁、と
思い切って観ることにしました。
結果、すんごく面白かったです!
いや〜、満足満足、
胸いっぱいになりました。
入口で屏風のようなポストカードをいただく。
なんだかワクワクします。
前半の『旅噂岡崎猫』という演目も
今までに観たことのない
アクロバティックな演出で
面白かったです。
日本三大化け猫のひとつ
「岡崎の猫」を
モチーフにしたお芝居だそうで
出演の役者さんたちが総じて若く
私が歌舞伎座に来なかった
20年の内にだいぶ世代交代が
進んでいるなあと感じました。
主演の化け猫を演じる坂東巳之助は
私の思い出の中では
小学生か中学生だったのですが
すっかり立派な役者さんになっており
(当たり前ですが)
「あら、巳之助ぼっちゃま、大きくなられて…」
と、気分はすっかり“ばあや”に。
まあ、巳之助さんも「化け猫」の役なので
お婆さんの姿をしながら
鴨居からぶら下がるは、飛ぶわ、
猫っぷりがいいのですが
もっとすごいのが
村の女役の役者さん。
睡眠術?にかけられ、意識がないまま
化け猫に操られている、という設定で
バク転、ブリッジで高速移動、
飛ぶ、回る、走るで
えらいこっちゃ!
大興奮のうちに幕。
そして、35分の休憩のあとに
『今昔饗宴千本桜(はなくらべせんぼんざくら)』です。
なんでもペンライトを
用意した方がいいらしい
とのことで売店で購入。
筋書き(公演パンフレット)も
購入して準備バンタン。
本番が始まる前に、
中村獅童による
口上といいますか、
ご挨拶があり
なみなみならぬ
この舞台にかける情熱を知りました。
そのあと、花道で裃(かみしも)を
ばりっと着こなした役者さんによる
ペンライトの解説。
なんと、この公演オリジナルの
ペンライトがあるそうで
14色のカラーチェンジができ
6種類の「大向う」音声付き
とのこと!
えーっ!私の買った300円(だったかな)の
サイリウムライトとえらい違いじゃん!
早く言ってよ!
と思いましたが後の祭り。
「大向う」とは、歌舞伎の舞台で
役者がキメのポーズをとったとき
その役者の屋号を叫ぶ
掛け声とでもいいましょうか。
20年前は
大向うといえば、
楽屋への出入りが許された
特別な人しかできない
と聞いたことがあり
ましてや女性がやると
白い目でみられる、
という雰囲気でした。
コロナ禍を経て
大向うのあり方も変わったのかなと
これまたしみじみしました。
お芝居の内容は
「義経千本桜」という
歌舞伎の名作が
ベースになっているとのことで
思ったより古典要素も入っており
中村七之助の舞など
うっとりしてしまう様式美!
初音ミク演じる美玖姫も
舞が美しく健気で儚げで
ちょっと泣きそうになりました。
初音ミクの大向うは
「初音屋!」
背後のCG映像が見事なときは
NTTを称えて「電話屋!」
役者さんたちには
「萬屋!」「中村屋!」「成駒屋!」と
老若男女の大向うが
四方八方からとび
今まで観た
伝統や決まり事が多い歌舞伎から
ぱーっと解き放たれたようで
「なんて自由なんだ!」と
胸が熱くなりました。
舞台のクライマックス、
中村獅童による
「数多の人の言の葉と桜の色の灯を!」
の声を合図に
客席は総立ち。
色とりどりのペンライトが
わっせわっせと振られ
隣にいた夫は思わず
「フー!」と囃し声。
私も大向うをやってみたかったけれど
結局勇気がなくできませんでした。
(ペンライトは振ったよ!)
歌舞伎では異例の
カーテンコールで
中村獅童は
「今、歌舞伎は変わる時なんだ!
若い人にもチャンスを!
俺はやる!だから応援してほしい!」
という内容の挨拶で
締め括っていました。
もちろん大喝采です。
そうだね、本来、歌舞伎って
そういうものなんだものね。
みんなを楽しませ、
「あっ」と言わせることに
命をかけるような
そんなものなのかもね。
便乗して、じゃないけれど
私も来年はちょっと変わりたい。
そう思わせてもらいました。
良いものを観させていただきました。
さて、ぜんぜん想像がつかないんだけど
と言う方もいらっしゃると思うので
今回の公演のかいつまんだ動画を
リンクさせていただきます。
それでは皆様、今年一年ありがとうございました。
来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。