
今回で3回目となる、小澤章二さんの絵画展「影の随想録」@アジギャラリー
本人曰く「神田の街を震撼させつつ、奥歯に手を突っ込んでガタガタ言わせる」展覧会とのことですが、なるほど、その言葉に一切の誇張はありません。会場に一歩足を踏み入れた瞬間から、こちらの感情を遠慮なく揺さぶってきます。
小澤さんは、絵描きであり、俳優であり、そしてシナリオ作家。
三足の草鞋を履きこなすその活動は、どれもが中途半端ではなく、それぞれの表現が互いを引き立て合っています。その結果、生まれているのは「ただ絵が並んでいるだけ」の展覧会ではありません。作品一つひとつに、明確な物語と温度があります。
さらに驚かされるのは、その物語を俳優・小澤章二本人が、江戸の町人になりきって解説してくれるという点。
制作背景、登場人物の心情、描かれなかった“その後”まで聞かされてしまうと、もう元の鑑賞者には戻れません。気がつけば、作品を見る目が変わり、距離が縮まり、「連れて帰らない理由」が見当たらなくなってきます。
そんなわけで、数々の作品に貼られた赤丸シールにも、自然と頷いてしまうのです。
会期は来週月曜日17時まで。
2025年の総括として、小澤作品にどっぷり溺れてみるのも悪くありません。今年が良い年だった人も、少し物足りなかった人も、次の年へ向かう弾みになること請け合いです。
どうぞお見逃しなく。