さんまや栗を楽しみ、秋を感じる今日この頃。食欲の秋、芸術の秋ということで、久しぶりに芸術に浸りたくなり、ゴッホ展に行ってきました。
日本人に人気のゴッホは、何度も回顧展が開催されているので、行ったことがある方も多いのではないでしょうか。私も開催広告を見ては行ったり行かなかったり…何度か足を運んだことはありましたが、今のアート欲にはクラッシックな芸術が気分です。ゴッホがぴったりだなと感じ、チケットをポチり。
ちなみに、2026年には大ゴッホ展「夜のカフェテラス」が開催予定で、20年ぶりの来日公開とのこと。ゴッホ好きなら見逃せません!…しかし今回は時すでに遅く、上野に着いたときに知りました。ネット購入はキャンセル不可。まあ、同じ映画を何度も観る人もいるし、と気を取り直しました。
東京都美術館で開催中の「家族がつないだ画家の夢」は、単に作品を並べるのではなく、ゴッホを取り巻く家族の役割に焦点を当てている点が特徴的です。
弟テオや家族に宛てた手紙を軸に展示が進行します。彼の人生や制作の背景を“言葉”と“絵画”の両面からたどることができます。例えば、ゴッホが日本の浮世絵に魅了されていたことは有名ですが、自身の絵画の基本に日本美術があると明言した手紙と共に展示されています。
さらに、今回の展覧会では手紙の原本が日本で初公開されています。筆跡や言葉遣いから、ゴッホの芸術への情熱や人となりをよりリアルに感じられます。専門家の時代背景からこうであろうという憶測に頼る展覧会とは異なり、作家との距離が近く感じられるような構成が面白かったです。
ゴッホといえば耳切り事件などのトリッキーな側面が誇張されがちですが、この展覧会では日本の美意識とフランスの田舎町の風景を重ねた世界観や、アカデミックな色彩研究など、創作そのものへの真摯な姿勢が軸になっていてとてもストーリーがありました。人間ドラマというよりも、画家としての純粋な探究心を感じられる展示だったと思います。
ちょうど聴いていたポッドキャスト「コテンラジオ」のゴッホ回では、弟との家族愛が語られており、その内容が展示を観ながら思い出され、理解が深まりました。
💁♀️https://open.spotify.com/episode/6XYun99ujQhqGnAJbyzplN?si=4e3a189c789f48d2
私は、まだ見ぬ誰かのために描いているような気がする。
絵がいつか誰かを励ますなら、それで十分だ。
音楽が人を慰めるように。
— フィンセント・ファン・ゴッホ
私は時代を超えて、その言葉の通りゴッホの絵に励まされ続けているのだと感じます。
【夜(ミレーによる):ゴッホ 】
今回で改めて印象的だったのは、独特な筆跡の躍動感と洗練された配色です。
中盤の「画家としての自画像」の前では、流れる客の中から「かわいい!」の声が聞こえ、私の心の声と重なりました。ゴッホといえば青と黄色の対比が有名ですが、会場では青と茶系(ベージュなど)の組み合わせが多く見られました。特に「ゴッホ 夜(ミレーによる)」では、光がイエローベージュ、陰が濃茶と濃い青、光の反射が薄い水色で表現され、確信犯的な配色に見入ってしまいました。観客からも「おしゃれ」と声が聞こえ、私だけの主観ではないと確信しました。
「木底の革靴」や「オリーブ園」も、デフォルメされた形がどこか現代的で、イラストのように可愛らしく、観ていて楽しかったです。
最後に、イマーシブコーナーではゴッホの描いた風景を空間で体感。フランスやオランダの田舎町を旅した気分になり、ゴッホの世界に魅了され改めてファンになったのでした。