奥州水沢へいらっしゃい(其の二)

2024-07-26

前回「其の一」に続き
岩手県奥州市水沢の名所のひとつ、
「国立天文台水沢VLBI観測所(旧緯度観測所)」をご紹介します。


↑大正10年(1921年)
日本で最初の国際的な観測所、
緯度観測所本館を再構築した「奥州宇宙遊学館」

「緯度観測所」とは、
1899年に始まった世界初の国際科学事業であり
ほぼ同じ緯度の世界6箇所で
同じ望遠鏡で同じ観測プログラムを使い
共同緯度観測が行われた場所です。
6箇所の内訳はこちら
・ゲイザーズバーグ (アメリカ)
・シンシナティ (アメリカ)
・ユカイア (アメリカ)
・水沢 (日本)
・チャルジュイ (現トルクメニスタン)
・カルロフォルテ (イタリア)

↑観測所所在地を表した地図が展示してありました。
(光って見づらくてすみません)

なぜ、世界各地で緯度を観測することになったのか。
それは一言では説明できないので省略させていただきます。
詳しくはこちらへ
https://uchuyugakukan.com/observatory/

観測開始当時、科学の中心は欧米で
日本の力は世界的にあまり認められておらず
その挽回のため、国をあげての事業だったそうです。
観測が始まって1年たったときに
国際観測事業の中央局(ドイツのボン)から
「水沢の観測は50点で不合格」という
日本としては不名誉なお達しがあったそうです。
所長の木村榮博士は、東京にいるお偉い先生方に
こっぴどく叱られると同時にとても責任を感じ
「あんなに精密に観測しているのになぜ?」
といろいろ見直しを図ったところ
観測に使われる方程式に加える「Z」の項目を発見。

これにより、日本のみならず
世界の観測所の観測値のばらつきが少なくなり
他の国にも認められる大発見となりました。

これが「Z項」と呼ばれ、
その後水沢のシンボルになりました。
母校水沢小学校の校章にもデザインされたり
「Zホール」やら「Zアリーナ」やら
何かにつけて公共施設の名前に「Z」が入っていたり。
もはや「Z」なしの水沢はありえない?



↑旧観測の望遠鏡があった建物
(実際の建物は損傷があるため、さらに建物で守っています。中の望遠鏡はハリボテ)
雨の日も雪の日も、戦争が激しい最中でも
観測をかかさず守り抜いた水沢観測所に
戦後の進駐軍も驚嘆したとのこと。

Z項を発見した初代所長木村榮博士は
石川県金沢市出身でもともとは水沢には縁もゆかりもなかったのに
大変優秀なため、日本初の国際事業のトップに選出され、水沢へ。
敷地内には「木村榮記念館」もあり、
当時の観測所の記録など
興味深い資料が展示されています。
なかでも驚いたのはこれ↓

木村博士の書ですが、なんと
向かって左は4歳、右は8歳のときに書いたものらしいのです。
4歳って!!天才すぎる


↑北緯39度8分のライン。
この線上に他国の緯度観測所があると思うと
意味もなく線の上に立ちたくなります。

奥に見えるは口径20メートルの巨大な電波望遠鏡。
この他、鹿児島県薩摩川内市、東京都小笠原村、沖縄県石垣市の4箇所に設置され
各所の観測データを合成して
日本列島規模の巨大なVLBI観測網を形成しているとのこと。

2019年4月に史上初のブラックホール撮影成功を発表し
いまやブラックホール観測の聖地になっているらしく
顔はめパネルが設置してありました。
ブラックホールの真ん中に顔…
(小くて見えづらいですが我が夫が顔をはめています)

この他、天文学専用のスーパーコンピュータ
「アテルイ」も設置されてますよ。

先に写真でご紹介した「奥州宇宙遊学館」では
宇宙のあれこれが学べ、イベントやワークショップも
随時開催されているもよう。

水沢菓子組合とコラボした
「ブラックホールスイーツ」なるお土産もあり!
• ブラックホールラスク
• ブラックホールせんべい
• ブラックホールタルト
• ブラックホールサブレ
などなど…

比較的平地で、建物も騒音にも邪魔されず
気持ちいいほど風通しの良い場所で
敷地を歩いているだけで癒されます。

ちょっと見た目地味な観光地ですが
内容も歴史も濃い「国立天文台」
水沢にお越しの際はぜひお立ち寄りくださいませ。

其の三へつづく!