4〜6歳を対象に2002年よりNHKのEテレで放送しているピタゴラスイッチをご存知でしょうか。
白い玉が様々な道具を駆使して転がっていき、最後「ピタゴラスイッチ」という名前が出て終わる数分間の番組。今や似た物があれば「ピタゴラスイッチみたい」と言われる程有名になりました。
「さぞかし大天才が作っているんだろうな」と思っていましたが、作者の佐藤雅彦さんは東京大学の教育学部卒業後に電通に入社し、数々のCM制作に携わり朝日広告賞やADC最高賞を受賞。独立して会社を立ち上げてゲームやNHKのテレビ番組に関わり、その後も慶應義塾大学や東京藝術大学の教授をしている想像通りのエリート。
今回そのピタゴラスイッチをはじめとした様々な仕事を紹介する佐藤雅彦展(11月3日まで)が開催されたため行ってきました。
今回初めて訪れた横浜美術館は2021年3月から3年かけてリニューアルされ、今年2月に全館オープンしたそう。
壁のない広い館内は勾配で仕切られていて、休憩スペースや絵本コーナーの近くに彫刻作品があったりと、珍しい空間ですべてが新鮮でした。
手を置くと読み込こまれた指紋が泳ぎ出す「指紋の池」という体験型の作品から、電通時代に手がけた「スコーン」「ポリンキー」「ドンタコス」「バザールでござーる」のTVCMや販促キャンペーン、独立後にNHKで放送された「アルゴリズム体操」「ぼてじん」「だんご3兄弟」などなど。知ってる知ってる!のオンパレードです。
(ピタゴラスイッチコーナーは残念ながら撮影不可でした)
開催2日目の昼過ぎに行った所かなり混んでおり、パネルの文字がじっくり読めず。かろうじて入れたシアターで座れたため、映像作品をじっくりと見ることができました。
そこで1番最後に流れてきたのがピタゴラスイッチ作品の一つ「ビーだま・ビーすけの大冒険」。
ビー玉の3兄弟、ビータ(長男の緑玉)・ビーすけ(次男の赤玉)・ビーゴロー(三男の黄玉)が黒くて怖い黒玉軍に追いかけられたり捕らえられたり…というような、ピタゴラスイッチにストーリー性を足した作品です。
子供騙しと侮るなかれ、これが結構面白い!
特にエピソード4「黒玉王子の大冒険」ではさらなる強敵トゲトゲ軍に捕えられたビーすけ達を、エピソード3でビーすけ達に助けられたライバルである黒玉軍の王子が逆に助けに行くという胸熱展開。
途中まで上手くいっていましたがさすがの王子でも歯が立たず、「父上ー!」と叫ぶと家来を2人?2玉?引き連れた黒玉の王が登場。家来が「ここはお任せください」と自らを犠牲にしてトゲトゲ軍をやっつけます。
手に汗握る展開で、思わず隣の3歳娘が「がんばれー!」と叫び出し、つられた他の子供たちも「がんばれ!」「がんばってー!」と続きます。
何だか私も目に熱い物がこみあげ、ラストシーンでは大人たちも拍手喝采でその場を後にしました。
期待を込めてミュージアムショップに立ち寄った所、やはり同じ考えの人が大勢いたようで「ビーだま・ビーすけの大冒険」DVDブックは売り切れ。
図録とピタゴラスイッチDVDだけ買って帰り、後日ネット通販で購入しました。
じゃじゃーん!
6月25日に発売したばかりのようで、あのエピソード4「黒玉王子の大冒険」もバッチリ入っています。
黒玉王妃はエピソード3の後に天に召されていたり、王は妃を失ってから頑固さが増してしまったり、身を挺してトゲトゲ軍をやっつけた家来には奥さんがいたり、細かい設定を読んだ後に見るとまた泣ける…
Amazonの商品ページに紹介動画が少し載っていたので、良かったら見てみてください。
ピタゴラスイッチ ビーだま・ビーすけの大冒険完全解説DVDブック
こういう時に思い出すのが、今から20年近く前に通っていた東洋美術学校という専門学校の学園祭の時のエピソードです。
クリエイティブディレクター箭内(やない)道彦さんの講演があったため聞きに行きました。講演は学生から事前に募った質問をガチャガチャのカプセルに入れ、実際に回してもらい出てきた質問に答える形式で進行されました。
箭内さんに「これいいじゃん面白いね」と好評で、そこから「ワクワクする子供ウケのいい物は大人にもウケる」という話になりました。そこで「子供がハッピーだと世界が平和になるんだよ」という、箭内さんのポエマーなセンスが光る言葉がその場にいた学生達に響き、会場が一気に拍手に包まれていました。
確かに子供にウケる流行作品って社会現象になるほど大人にもウケますよね。
子育てを始めてもうすぐ4年になりますが、子供向け作品にはこういった素敵なクリエイティブが付きものだなぁとしみじみ思いました。
そんな事で今度は2児の母ちゃんになるため、来月から2回目の産休と育休をいただく事になりました。
子供がハッピーになる物を生み出すべく、また新しい社会経験を積んで戻って参りたい所存です。