That’s Life

2018-09-20

隣の家からカレーの匂いがすると、無性にカレーが食べたくなるように
蕎麦屋からそばつゆの香りがすると、蕎麦が食べたくてたまらなくなるように。

その日、会社に流れるネットラジオから
シナトラの歌う「That’s Life」が聴こえてきたとき
もう一度きちんと「That’s Life」が聴きたくてたまらなくなりました。
それは十何年ぶりかの「That’s Life」だったからです。
それから定時まで仕事をしながら頭の中では歌が鳴り続け
帰りの電車に乗るやいなやApple Musicを検索しました。

記憶は1985年、私が高校生の頃に遡ります。
大好きなデイヴ・リー・ロスが
人気絶頂期のヴァンヘイレンを脱退。
派手なケンカ別れとマスコミは騒ぎ立て
世間はデイヴ派とヴァンヘイレン派に別れました。
私はもちろんデイヴ派。
ボーカルが抜けたヴァンヘイレンは
実力派サミーヘイガーを迎え、翌年1986年に新アルバムを発表。
結果は全米No.1の大ヒット。
ああ、デイヴは何をしているのか。私はひとりやきもきしました。
その数ヶ月後デイヴは、スーパーギタリスト、スーパーベーシスト、スーパードラマーを集め
自身のバンドを結成、勢い良く新アルバムをリリースしました。
その名も「Eat ‘Em and Smile」(奴らを食って笑う)
そう、「奴ら」とはヴァンヘイレンのことですね。
その勢いのいいアルバムのB面の最後に収められていた曲が
「That’s Life」でした。
ハードロックのアルバムの最後が往年のポピュラーソングのカバーとは洒落ているなあ〜
この曲がまた、デイヴにぴったり合う。
「勝った。ヴァンヘイレンに勝った。」私はほくそ笑みました。

しかし、結果として全米1位には届かず、
その後もヴァンヘイレンは快進撃を続けていくことになります。
デイヴはそこそこ…

今となってはどちらのアルバムもほとんど聴くことがなくなりましたが
「That’s Life」だけはひっかかり続けました。


「Eat ‘Em and Smile」CD歌詞カードより抜粋

さて、ひさしぶりにデイヴの「That’s Life」を聴き終えて満足したものの
それだけではちょっと物足りなくなり、再度検索結果を目にすると
大御所たちを含む様々なアーティストたちが「That’s Life」を歌っているではありませんか。
シナトラが歌ってヒットさせたため、彼の曲のようになっていますが
もともとは別な人が歌っていた曲らしいこともわかりました。

それから毎日検索結果を拾って聴くのが面倒になり
ある日とうとう「That’s Lifeプレイリスト」をつくりました。
アレサフランクリンをプレイリストに入れた時、
「ああ、アレサも久々に聴くなあ」と思ったものです。
その1ヶ月後、彼女が亡くなりました。
「That’s Life」という曲は
人生の裏も表も知った男の人が歌うイメージの曲。
しかしアレサは20代半ばのときに堂々と歌い上げています。
歌詞の「王様」を「女王」に変えて。なんたる“女王感”!
20代にして「これが人生ってものよ」と言うにふさわしい歌声です。

このプレイリストに入っているのはすべて「That’s Life」という曲ですが
歌っている人の「Life」がそれぞれ違うためか
まったく違って聴こえます。
おすすめはデイヴ・リー・ロスといいたいところですが
やっぱりシナトラの歌声が一番ですかね…
彼のための曲という感じがするんですよね

ちょっと疲れたなあ、とか、なんだか調子が出ないなあ
と感じた時に元気が出る曲「That’s Life」でした。